個を理解する

英語で過ごす放課後 English Treeには、幼稚園生から小学6年生まで異年齢の子どもたちが通ってくれています。年齢だけでなく、英語学習の経験やレベルも違います。そんな子たちが同じ場で過ごして同じように成長できるのか。正直、「同じように」は成長しません!でも、それは例え同じ学年の同じ学習経験の子たちだけ集めても同じことです。なぜなら、そもそも一人ひとりの性格や能力が当たり前に違っているからです。英語一つとっても、その習得方法や速度等も違ってきます。全員同じ教科書で、同じ方法で、同じことを同時に学んだところで、同じ結果が得られないのは当然なのです。

そのうえで、一人ひとり、全員をきちんと成長させるにはどうしたらいいのか

間違いなく、まずは個を深く理解することです。

もちろん個人レッスンではありませんので、個に割く時間や力には限りがありますが、それでも私はできるだけ個にしっかり注目してその子の力をしっかりと引き出したいと考えています。

どうやって??

例えば、Hana(年中さん)はまだEnglish Treeに来るようになって2カ月ほど。慎重な性格で、むやみに英語を口にすることはありません。それでも、繰り返し聞く単語や短いフレーズ、長めでも耳元で数回言ってもらったフレーズに関しては、気持ちが乗れば言ってくれます(笑)耳が良く、聞いた発音をそのまま言うことができます。プッシュしすぎたり「分からない」が重なりすぎると、悲しい気持ちになり涙がこぼれてしまいます。芯が強く、「やらされる」「言わされる」は好みません。そんなHanaに、どうアプローチするか…。

この日Hanaは、プレゼント交換用のクリスマスプレゼントを持ってきてくれました。それを入れていた紙袋をHanaは自分のかばんの横に置いていました。他の子がかばんを置けなくなるので、紙袋をかばんの中に入れるよう伝えると「お姉ちゃんのかばんが大きいから、お姉ちゃんがきたらお姉ちゃんのかばんに入れてもらうの!」と教えてくれました。

ここで、私は「今日、Hanaには”big”と”small”を習得してもらおう」と、密かに決めました。

“True. This paper bag is too big. Your bag is a bit small. Your sister’s bag is bigger? Big? I see.(ホントだ。この紙袋はちょっと大きいね。バッグは小さい。お姉ちゃんのバッグは大きいの?なるほどぉ。)”

ジェスチャーをつけながら、ほんの少し”big”と”small”を強調し、会話にたくさん織り交ぜます。

自習の時間には、折り紙を一緒にしました。私が普通サイズの折り紙を小さく切っていると、横でHanaが不思議そうに見ていたので、

“Wow. This paper is too small! Can I make a small crane with this?(うわぁ。この紙小さすぎるなぁ。小さな鶴、作れるかなぁ。)”

“Look! A small small baby crane! And this is a big mommy crane.(見て!小さな小さな赤ちゃん鶴ができたよ!そしてこれは大きなお母さん鶴。)”

できる限りその単語を強調し多く使うようにしていると、横でHanaが鶴を持ち、小声で

“Small baby. Big mommy.”

Small baby. Big mommy.

と、言っているではありませんか!!そのキラキラした目に、キュンキュンしつつ、心の中ではガッツポーズです(笑)

「教えた」わけでも、「練習」したわけでも、「強要」したわけでもありません。彼女が彼女のタイミングで、言いたかったから言っただけです。彼女の中にワードがたまり、認識され、彼女の意思で取り出せたのです。”mommy” も、私と彼女の中ではよく使う大切なワードなので、彼女の気持ちや理解に役立ちました。これは私とHanaにとって、大きな1ステップです。

これを、私は全ての子どもに対して日々行っています。個への歩み寄り個の理解なくして個の力を引き出し伸ばすことなどできないと思います。試行錯誤の毎日ですが、私の生きがいです♪